Q1

労働者からの任意退職の申し出について、申出期間に制限がありますか。


 期間の定めがあるかどうかで異なります。

 民法第627条では、期間の定めのない契約の任意退職の申出期間について、申出の原則として2週間後に退職の効力が生ずるとしています。
 民法の規定は、原則として任意規定であることから、労働契約や就業規則で異なる定めをすることはできると解されますが、前記「2週間」の期間を極端に長くすることは労働者の退職の自由を制限するものとして無効となる場合が考えられます。

 期間の定めのある契約について、期間途中で退職の申出をすることは、原則としてできませんが、やむを得ない事情があれば退職の申出ができます(民法第628条)。
但し、その事情が労働者の過失によって生じた場合には損害賠償責任を負うことがあります。

 なお、労働基準法の改正(平成16年1月1日施行)に伴い、1年を超える期間の定めのある有期労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除く。)を締結した労働者(労働基準法第14条第1項各号に定める専門的知識等を必要とする業務に就く場合及び満60歳以上の者が労働契約を締結する場合を除く。)は、1年経過日以後はいつでも使用者に申し出ることにより、退職できるとする3年間の暫定措置が設けられています。


 インフォメーション

民法第627条、第628条、労働基準法第14条


 


Q2

本心でない退職願も有効ですか。


 本心でない退職願は無効となる場合があります。

 退職願は労働契約を解除する意思表示であり、本心に基づかなければならないことは当然ですが、退職願を提出しても、労働者の本心に基づかない場合があり、この場合にはその効力が問題となります。
 民法では、本人(労働者)が自分の本心に基づかないで行った意思表示は原則としては無効とならないと規定しています(民法第93条本文)。但し、相手方(会社)が本心に基づかないことを知っていた場合又は知り得る事情があった場合には、無効となるとしています(民法第93条但書)。
 また、民法では、退職の意思表示に錯誤(民法第95条)、強迫(民法第96条)などの瑕疵がある場合には、その意思表示は無効又は取り消しうることを規定しています。
 いずれにしても、退職願の提出があった場合には、本人にその意思を充分確認することが必要です。


 インフォメーション

民法第93条、第95条、第96条


 


Q3

退職願の撤回はできますか。


 退職願の性格をどうみるかによって異なった結論となります。

 退職願を労働者の一方的な解約の意思表示と解すれば、使用者の承諾がない限り原則として撤回はできないと考えられます。
 また、退職願を合意退職の申し入れと解すれば、使用者が合意するまでは撤回ができることになります。
いずれにしても、使用者が退職を承諾する意思表示をすれば撤回はできなくなります。



 


Q4

同業他社への転職を制限できますか。


 競業避止義務とは
営業上の秘密や会社の重要な技術上のノウハウを知っている社員が退職後同業他社に就職したり、独立して同業を開始した場合、会社は大きな損失を受ける恐れがあります。
 そこで、会社では、退職に際して同業他社への就職や独立開業を制限する特約をしたり、就業規則で禁止したりします。これを競業避止義務といいます。

 競業避止義務の特約も内容が合理的なものであれば可能
 この競業避止義務については、職業選択の自由や営業の自由を制限することになることから、これを不当に制限することにならないことや、会社の利益を保護するための必要最小限のものであることなど、合理的な内容のものであることが必要です。
 労働者は在職中には、信義則上、当然、競業避止義務を負うものと解されていますが、退職後にもこのような義務が当然あるわけではなく特約がなければ義務は負わないと解されています。

 競業避止義務の特約の合理性の判断基準
 特約の合理性については、次のような点から判断されます。

@特約によって保護される使用者の正当な利益の存在すること
いわゆる「営業上の秘密」がこれにあたります。
労働者が在職中に得た一般的な知識・技能を使って営業することは禁止されるものではありません。
A特約の相手方である労働者が、使用者の営業上の秘密を知ることができる立場にあること。
B一律には判断できませんが、競業制限の期間、地域、職業の範囲等が重要な要素となります。
C代償措置の有無も重要な判断要素となります。

 競業避止義務違反の効果
 競業避止義務の特約が有効なものであり、これに反する行為があった場合、使用者は損害賠償請求をすることができます。
 また、不正競争防止法における不正行為にあたる場合は、同法に基づく差止請求ができます。


 インフォメーション

不正競争防止法第3条、第4条


 


Q5

定年制は必ず設けなければならないのですか。


 定年制を設けるかどうかは事業主の自由です。

 定年制とは、労働者が定年に達したときに労働契約を終了させる制度です。
 高齢化社会を迎えている現在、高齢者等の雇用の安定等に関する法律第4条により、定年の定めをする場合には、60歳以上定年制とすることが義務づけられています。
 つまり、定年制を設ける場合には、定年を60歳以上とすることが義務づけられるものであり、定年制を定めるかどうかは事業主の自由です。
 なお、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の改正により、平成18年4月から、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、65歳までの安定した雇用を確保するため次の@〜Bのいずれかの措置を講じなければならないことになりました。

@定年の引上げ
A継続雇用制度の導入
B定年の定めの廃止


 インフォメーション

高齢者等の雇用の安定等に関する法律第4条


 


Q6

解雇は自由にすることができるのでしょうか。(解雇の制限−事由による制限)


 「解雇には相当な理由が必要」とするのが判例の考え方です。

 期間を定めずに雇用した者に対しては、原則として14日前に予告すれば、労使いずれからでも任意に契約を終了させることができるのが民法の原則です(民法第627条)。
 民法上は、労働者には退職の自由が、使用者には解雇の自由が与えられています。
 ただし、労働基準法では、最高裁の判決で確立している「解雇権濫用の法理」を踏まえ、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効としています。詳細は、Q810を参照してください。
 なお、期間の定めがある場合の期間の満了は原則として解雇ではありません。

 労働基準法などでは、一定の場合に解雇を制限しています。

 労働者保護の趣旨から次のような解雇の制限があります。

@国籍、信条等による差別解雇の禁止
労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇は無効となります(労基法第3条)。
A男女雇用機会均等法による解雇制限
労働者が女性であること、女性労働者が結婚、妊娠、出産したこと、または産前産後の休業をしたことを理由とする解雇等は禁止されています(均等法第8条)。
B不当労働行為の禁止
労働者が労働組合の組合員であることや、組合に加入したり組合を結成しようとしたことなどを理由とした解雇は不当労働行為に該当します(労組法第7条1号)。
C業務上の傷病等による休業期間中の解雇制限
労働者が業務上のケガや病気で療養のため休業している期間及びその後の30日間、産前産後の女性が労働基準法の規定で休業している期間及びその後の30日間は解雇できません(労基法第19条第1項−但書に例外規定有り)。
D育児休業に関する解雇制限
労働者が育児休業を申し出たり、育児休業をしたことを理由とする解雇は禁止されています(育児・介護休業法第10条)。
E介護休業に関する解雇制限
労働者が介護休業を申し出たり、介護休業をしたことを理由とする解雇は禁止されています
(育児・介護休業法第16条)。
Fその他
労働者が労働基準法等の違反の事実を労働基準監督署などに申告したことを理由とする解雇は無効となります(労基法第104条第2項)。


 インフォメーション

労働基準法第3条、第18条の2、第19条、第104条第2項、労働組合法第7条、
男女雇用機会均等法第8条、育児・介護休業法第10条、16条、民法第627条


 


Q7

突然あすから来なくてよいと言われましたが、こういうことができるのでしょうか。
(解雇の制限−手続による制限)


 解雇予告制度
 労働基準法では、解雇をするには、後述の場合を除いて30日前に予告するか、予告手当として平均賃金の30日分以上の金額を支払うことが必要としていますので、予告手当を支払わない限り直ちに解雇することはできません。
 また、解雇は相当な理由もなくすることはできないとするのが判例の考え方であり、さらに、労働基準法等では解雇そのものを制限している場合がありますので、これらにあたるかどうかも問題となります(詳細はQ6〈リンク〉を参照)。

※「30日前」とは、予告した日は計算に入れず、その翌日から計算して解雇する日まで30日間が必要となる。
例6/30に解雇する(6/30が最後の労働日)には、5/31までに予告する必要がある。
※解雇(予告)の意思表示の方法
特に法律上なんらの規定もおかれていないので、口頭、文書いずれでもさしつかえないが、後日の紛争を避けるため文書による通知が望ましい。
なお、通知の効力は通知が相手方に到達したときに生ずる。
※「平均賃金」は、一般的には、直近の3ヶ月間に支払われた賃金の総額を3ヶ月間の暦の日数で除して算定する。

 解雇予告制度の適用除外
 解雇予告制度には、次のような場合には適用されません(労基法第20条1項但書、3項、21条)。

@日日雇い入れられる者(1ヶ月を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告制度が適用される。)
1日単位で雇われる労働者であり、1日ごとに労働契約が終了するので、本来解雇の問題は生じませんが、結果として1ヶ月を超えて使用されれば、解雇予告制度が適用されます。
A2ヶ月以内の期間を定めて使用される者
季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者
(いずれも所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告制度が適用される。)
 労働契約に期間の定めがある場合、期間満了前に解雇することは、民法上は「やむを得ない事由のあるとき」(民法第628条)又は使用者の破産したとき(民法第631条)に限られますが、期間途中の解雇について条件を付しておけば、解雇することができます。
B試用期間中の者
(14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は解雇予告制度が適用される。)

C天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
D労働者の責に帰すべき事由
CDについては、労働基準監督署長の認定が必要です。

 解雇予告制度に違反した解雇の効力は
最高裁判例では、予告期間も置かず、予告手当の支払もしないで労働者を即時解雇した場合でも、使用者が即時解雇に固執しない限り、解雇の通知後30日を経過するか、予告手当を支払うかどちらか早いときから解雇の効力が生ずるとしています(S35.3.11最高裁判決、細合服装事件)。
但し、刑事上は、労働基準法第20条違反として処罰の対象となることが考えられます。


 インフォメーション

労働基準法第20条、第21条、民法第628条、第631条


 


Q8

どのような場合に整理解雇ができますか。


 真にやむを得ない事由がある場合のみ許されます。
 労働基準法では、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効としています。
 不況や業績悪化を理由とした整理解雇は、もっぱら企業経営側の事情によるものであって、一般的に労働者側には責任ないし落度なくして行われるものです。
 したがって、それは客観的にみて真にやむを得ない事由のある場合に限り行うことが許されるものであって、そのような要件に欠ける整理解雇は、解雇権の濫用として無効とされます。

 判例上、整理解雇には次の4つの要件が必要とされています。
 整理解雇については、多くの判例が出されていますが、これらは、整理解雇の有効要件として次のような4つの要件をあげています。

@整理解雇の必要性
企業が高度の経営危機に陥り、企業の維持・存続を図るためには人員整理が必要であること
A整理解雇回避の努力
解雇に先立ち、退職者の募集、出向・配置転換その他余剰労働力吸収のために相当の努力が尽くされたこと
B人選の合理性
被解雇者選定のための整理基準そのものが合理的であり、かつその基準の運用も合理的であること
C労働者側との協議
解雇の必要性・時期・規模・方法・整理基準等について、労働者側を納得させるため真剣な努力がなされたこと


 インフォメーション

労働基準法第18条の2


 


Q9

パートタイム労働者は自由に解雇できますか。


 まず、労働基準法上の解雇予告制度の遵守が必要です。
 パートタイム労働者も労働基準法上の労働者であることに変わりありませんので、労働基準法上の適法な要件を備えることが必要です。

 したがって、労働基準法に定める解雇予告等を行うことが必要となります。
 以上については、前記Q7を参照してください。

 次に、解雇が相当な理由に基づくものであることが必要です。
 労働者を解雇する場合には何らかの相当な理由が必要ですが、このことはパートタイム労働者についても同様です。
 いかなる場合に相当な理由があるといえるかは、その労働者の具体的労働の実態、契約の内容、事業の実情その他諸般の事情を考慮する必要があり、一概に決定することはできません。
 そこで、例えば、正社員の採用によってパートタイム労働者が不要となった場合に、これを解雇することが相当な理由があるといえるかは、一般的には次のような要件をすべて充たす必要があると考えられています。

@正社員の過員状態による解雇が真の理由であり、他の目的による解雇にこれをもって代えようとするものではないこと。
A正社員による過員状態が一時的、臨時的なものでないこと。
B他の部門に配置替えすることによっても当該パートタイム労働者を活用する途がないこと。



 


Q10

 判例上「解雇権濫用の法理」により合理的理由を欠く解雇は無効となるとのことですが、どのような理由があれば合理的理由があるとされるのでしょうか。


 判例上、解雇権濫用の法理が確立されています。
 最高裁判例は、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる」と述べており(S50.4.25最高裁判決、日本食塩事件)、また、「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効となる」と述べており(S52.1.31最高裁判決、高知放送事件)、解雇権濫用の法理を確立しています。

 解雇権濫用の法理における解雇の合理的理由には次のようなものがあります。

@労働者の労務提供の不能、労働能力または適格性の欠如・喪失によるもの
A労働者の規律違反によるもの
これは、懲戒解雇に相当するものです。
B経営上の必要に基づくもの
これは、いわゆる整理解雇に相当するものです。
Cユニオン・ショップ協定に基づく組合からの解雇要求によるもの 等